主な活用方法
ペットを飼っている人が、将来的に介護施設へ入居したり、入院するなどで飼えなくなってしまう事があります。法律上はペットは動産(物)であるため、ペットに遺産を残すことはできません。自分が飼えなくなった時に、ペットの世話を他の人に頼むために民事信託を活用する方法があります。
・Aさん(76歳・一人暮らし・女性)は可愛がっている愛犬がいます。
・自分の年齢からすると、最後まで飼っていけるか心配しています。
・Aさんに身寄りはなく、信頼のできる甥のBさんがいますが、遠方に暮らしており、面倒を見てもらうことが出来ません。
・ご近所で仲の良いCさんが何かあったときには愛犬の面倒を見てくれると言ってくれています。
・Aさんの資産は1000万円程度あり、そのうち500万円を愛犬のために使おうと考えています。
・Aさん死亡後は愛犬を最後まで面倒見てもらいたい、そして愛犬死亡後は甥にあげたいと考えています。
(1)何もしない場合
Aさんの死後、相続財産はAさんの兄弟姉妹、またはその子供にいきます。当然、甥のBさんにも行きますが、仲が良くて愛犬の世話をしてくれるCさんに対してなんのお礼もできません。
(2)負担付遺贈をした場合
愛犬の世話をしてくれるCさんに対して、愛犬の世話をして貰う代わりに500万円ほどの財産を遺贈する方法があります。
ですが、本当にAさん死後に愛犬の世話を最後までしてもらえるかどうかわかりませんし、どのような世話をしたかチェックする人もいません。
民事信託を利用すれば、Aさんが死亡した後、Cさんが信託財産をペットのためにのみ使うことができる契約を締結できます。
さらにCさんがきちんと世話をしているかどうかの確認のため、監督人をつけることができます。
具体的なやり方としてAさんを「委託者 兼 当初受益者」Cさんを「受託者」Bさんを「第二受益者」とします。さらに愛犬死亡時に一定の金銭を交付するよう定めます。
Cさんは預かったお金を飼育費等にしか使うことが出来できません。
場合によって信託監督人を選任し、Cさんの監督をしてもらいます。
民事信託契約のポイント!
・Aさんを「委託者 兼 当初受益者」とする
・Cさんを「受託者」Bさんを「第二受益者」とする
・信託監督人の選任も検討する
民事信託を利用する場合のメリット・注意点
- 愛犬のために信託された500万円は、民事信託の契約により、飼育費当以外には使うことが出来ません。
- Aさん死亡後は引き続き、受託者Cさんが愛犬の世話をすることとなります。
- 信託監督人(司法書士等)を定めることでCさんの行動を監督し、確実に愛犬の面倒を最後まで看ることが出来ます。
- Aさんも愛犬も死亡した後は、Cさんに一定のお礼を、残ったお金を親族の甥にあげることで終了させることが出来ます。