主な活用方法
親族に障がい者や引き籠りなど自立した生活が困難な方がいる場合、将来も継続して遺産を給付したいと考える方がいます。このようなケースでは「障がい者等支援信託」で対応することが可能になります。
・Aさん(70歳)には長男Cさん(44歳)、次男Dさん(40歳)、長女Eさん(38歳)がいます。夫Bはすでに亡くなっています。
・長男Cさんは中学生の時に自転車で車の事故にまきこまれ、高次脳機能障がいが残り、自立した生活が困難な状態です。
・今はAさんはCさんと同居し、生活を共にしていますが、DさんEさんは結婚して家を出て近所に住んでいます。
・Aさんには財産がありますが、自分の死後自宅は長男Cさんにあげ、次男DさんにCさんの面倒を見てもらいたいと考えています。
・また、その後Cさんが亡くなることがあれば、自宅とCさんの財産は、お世話をしてくれた次男Dさんに渡したいと考えています。
(1)何もしない場合
Aさんの遺産はCさんDさんEさんに均等に相続されます。
Cさんのお世話をDさんがしてくれるとは思いますが、わかりません。
また、Cさんの死後、財産はDさんとEさんに均等に相続されます。
(2)負担付遺贈
AさんがDさんに負担付遺贈という形で、Cさんの面倒をみる代わりに、自宅を含めて多く財産を残す方法が考えられます。
しかし、この方法はAさんの死後必ずしもDさんがCさんの面倒をみるか不明であり、勝手に散財してしまう可能性もあります。
(3)成年後見と遺言の組み合わせ
Aさんが長男Cさんのために次男Dさんを後見人候補者とする成年後見の申立てをします。また、同時に自宅と生活費を長男Cさんに相続させる旨の遺言を遺します。
しかし、この方法だとCさんが亡くなった後、自宅を含めたCさんの遺産をDさんとEさんで分割協議をしなければならず、自宅とCさんの遺産は面倒を見てくれたDさんにあげたいという願いが叶いません。
民事信託を利用すれば、Aさん死亡後は一定の財産と自宅に住み続ける権利(受益権)をCさんが確保できます。しかも管理運用処分は信頼できるDさんに任せられます。
その後さらにCさんがなくなった場合、お世話をしてくれたDさんの恩に報いる形で残りの資産をDさんにすべて渡すことができます。
具体的にはAさんを「委託者 兼 当初受益者」次男Dさんを「受託者」とする信託契約を結びます。そしてAさん死亡後の「第二受益者」に長男Cさん、長男Cさんの死亡後の「第三受益者」に次男Dさんを指定します。
また同時に長男Cさんのために成年後見を申し立てることも検討します。
民事信託契約のポイント!
・Aさんを「委託者 兼 当初受益者」とする
・Cさんを「第二受益者」とする
・Dさんを「受託者」「第三受益者」とする
・必要に応じて成年後見人選任の申立をする
民事信託を利用する場合のメリット・注意点
- Aさんが仮に死亡した場合、長男Cさんに受益権を移すことで、自宅に住む権利を確保しつつ、管理は次男Dさんが行えます。
- その後長男Cさんが亡くなった後には、受益者を次男Dとすることで、世話をしてくれた次男Dさんに報いることが出来ます。
- 成年後見人をつけることで、身上監護権や施設や介護サービスの契約もスムーズにすることが出来ます。