主な活用方法
賃貸ビル等を所有しているオーナーが高齢な場合、将来的に認知症や寝たきりになるリスクがあります。金利の良い条件で借り換えしたり、様々な契約をする場面になった時、認知症であれば契約行為や銀行取引が一切できません。
後見人を選任することで、後見人がすべての財産を管理することが出来ますが、後見人選任にもメリット・デメリットが存在します。
・賃貸ビルを所有している高齢のAさん(広島在住)は、まだまだ元気ですが、最近は物忘れがひどくなり将来認知症や寝たきりになるかもしれないと心配しています。
・Aさんには、息子BCDさんがいますが、近くに住むのはBさんだけなので、将来賃貸ビルはBさんに任せようと考えています。
法定後見以外方法はありません。
「任意後見制度」を利用し、将来の認知症に備え、あらかじめBさんを後見人に指定しておく。また、遺言を残し、賃貸ビルをBさんへ引き継ぐことも同時に準備しておきます。
(懸念点)
任意後見契約を結んでいても、Bさんが後見人に就任するには家庭裁判所へ後見監督人の選任の申立てが必要となります。
いざというときに時間的ロスが生じるとともに、他人が家庭に入ってくることに抵抗があると感じる人もいます。
民事信託を利用する場合ではAさんがお元気なうちに、家族のために民事信託契約を締結し、AさんからBさんへ賃貸ビルの所有権を移転します。
Bさんが管理運用処分の権限を持つことで、Aさんの認知症にも対応できますし、Bさんの賃貸ビルを運用していくのだという気持ちにも変化が出ます。
そしてAさん死亡後はAさんの受益権をBさんへ移せば、賃貸ビルの行方も定まり、遺言の代わりにもなります。
もちろん民事信託のみでは、身上監護権(Aさんの身の回りの世話)や、信託財産以外の財産の行方について定めることが出来ませんので、
●任意後見契約
●公正証書遺言
を同時に締結、作成することも検討します。
民事信託契約のポイント!
・Aさんを「委託者 兼 当初受益者」とする。
・Bさんを「受託者」かつ「第二受益者」とする。
・任意後見契約と公正証書遺言も同時に検討する。
民事信託を利用する場合のメリット・注意点
- Aさんの信託財産(賃貸ビル)は継続的な管理運用処分が必要なため、受託者BさんがAさんから連続して行うことができる
- 信託財産以外の財産については、遺言を残すことにより、遺留分に配慮し、誰が何を相続するか決めることができる
- 身上監護権については任意後見契約を締結することにより、将来認知症になり、施設等との契約が必要な際にも、後見人が対応できる。