実際の事例
不動産の管理を妻へ信託する事例
事例の背景
Xさんは先祖から受け継いだ土地家屋含め、所有不動産が多数ありました。そのうちの一つで、工場として20年以上優良企業に賃貸している物件あります。今は家賃が入り順調ですが、古い建物ですので、いつ不具合や契約解除などの想定外な出来事が生じるかわかりません。預貯金はほとんどありません。
Xさんは数年前にパーキンソン病と診断され、現在も筋肉が萎縮していく症状が現れ、進行中です。難病指定のある病気であり、レビー小体認知症という合併症も併発する可能性が高いです。妻Yさんからの相談で、近いうちに能力が失われていくのは目に見えており、まだ夫Xさんが元気なうちに、賃貸している物件をどうすべきか当方へ相談しに来られました。
そのような中、後見制度を利用、今のうちに売却、贈与する方法などを検討する中、信託が一番適しているのではないかという結論に至りました。
信託組成
方針を決めるにあたって、当事者である夫Xさん、長男Aさん、次男Bさん含め全員で話し合いをしました。全員の合意を得た上で着手し、夫Xさんを委託者兼受益者、妻Yさんを受託者、工場を信託財産として、信託契約を締結しました。
もしも工場が長期的に売れない場合を想定し、仮に夫Xさんが先に死亡した場合も組み込みました。
第二受益者を妻Yさんとし、その際受益者と受託者は兼ねられないことから、第二受託者をAさんとしました。
賃貸中である現テナントの会社と売買金額に付き折り合いが付き、適切な時期に、適切な価格で売却することができました。
信託財産である不動産は、そのまま金銭へと形を変え、引き続き信託財産として存在しています。施設の転居、手術に備え、いつでも夫Xのために使うことができる金銭として、妻Yが管理をしています。